「ひとりっ子」「オラクル」の私的解釈。
※ネタバレ有り。未読者注意。




シュレディンガーの猫のように外の世界の要因のために自分が分岐すればどんな特殊な量子脳であろうと分岐は防げないんじゃないか。
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「ひとりっ子」の段階では防げないと思う。
この時点でのQUSPが実現しているのは、例えばヘレンがジャンケンをするとして、ジャンケンの相手がカニ型怪人だった時に、ヘレンが何故かチョキやパーを出してしまう「分岐」を「消す」事ではなく、その「分岐」のヘレンにもグーを出させるようにするという、

自分が異なる判断をして分岐した場合のみを心配しているんだろうか。

という事だけだと思う。
なので、実はカニ型怪人は改造手術で手をパー型にしていて、ジャンケンの直前まで手の形を隠していたとする。
ここでカニ型怪人が「分岐」して、ジャンケンの直前まで完璧に手の形状を隠していた分岐と、うっかりヘレンに手の形状を見せてしまった分岐に分かれたとする。
この二つの分岐では、ヘレンに与えられた情報に差があるので、ヘレンは、前者ではグーを出して負けるだろうし、後者ではチョキを出して勝つと考えられるので、「外部要因由来の分岐は防げない」と思われる。
しかし、「オラクル」での、最後に現れた方のジャックは、

わたしがいっしょにいれば、きみに触れていれば、きみは分岐することができないのだ。

と言っているので、
つまり、QUSPの効力が、「ひとりっ子」時代のものよりも範囲が広く、CPU内だけではなく一定空間内を対象にできるように進歩したのだ、という風に思える。
QUSPは「分岐」を消すのではなく、範囲空間内のあらゆる分岐を「同一状態に保持する」だけなので、意志は別に分割されたりはしないし、
QUSPの効果範囲が大きくなればなるほど、QUSP外からの影響がQUSP内の人格に与える、分岐由来のランダム性は小さくなると思われるので、
ヘレンはほぼ「分岐しない」状態だと言って問題ないレベルになる。


という事だと思う。多分。


(追記: しかし、よく考えたら、非量子コンピュータならそもそも分岐しないんだから、別にQUSPじゃなく非量子CPUを使って人格ソフトウェアを動かしても同じ結果になったんじゃないのか?ネズミAIを何回も試行して違う結果が出るかどうかやってたりしたが、あれは何由来で結果に変動があったんだ?あとで読み直す事。)

量子チューリングマシンで停止問題を解く方法は分からないが、停止問題の本質は自己言及の部分にあると思うので、自分自身を除外するような条件を追加すれば、実現可能……なような気はする。
ラクルであるヘレンはヘレン自身を操作/判定する事はないとする、みたいな(実際、別の分岐から分岐へと渡り歩いている為、大丈夫そうに思える)。
髭剃り屋のパラドックスでいくなら、髭剃り屋は女性で髭を剃る必要がなかった、みたいな。


が、そんな簡単にできるのかどうかはちょっと怪しそう。
どこかで引っかかりそう。